皆さんこんにちは。よーそろ代表の井上明です。
今日は「センスは知識と訓練」というテーマで書いていきたいと思います。
建材メーカー営業マンの仕事
私は御手洗に来る前、約7年間建材メーカーの営業マンとして働いていました。建材と言っても色々あります。構造を支える木材であったり、内装材である床材、天井材、壁紙、外装材である漆喰、サイディング、屋根材等。
以前勤めていた私の会社は主にサイディングという外壁材を製造するメーカーでした。
サイディングの中でも窯業系外壁材と呼ばれ、セメントと木質系材料を混ぜ、レンガ調、塗り壁調、石積み調などにプレスし一枚の板に成形します。その板に塗装をかけ仕上げたもので、当時は新築住宅の約7割に使われていました。工期をより短くコストを抑える乾式工法で、多種多様な個性ある雰囲気をつくることができます。
私の営業先は基本問屋、販売店なのですが、商品指定が入ると否が応でも注文が上がってくるため、家を建てる施主と直接話をして家づくりを進めていく工務店や設計事務所にも当然営業に行っていました。
どのようなコンセプトでどのようなデザインにするかは施主と工務店や設計事務所が話合いを重ね、建てる家の図面を起こします。そのイメージの選択肢としても外壁材は施主のイメージを形に落とし込むためにわかりやすいツールであり、価格帯と実際の壁のサンプルがそのイメージ作りの場にあれば商品の指定として図面にも掲載される確率は上がることになります。
ただ、田舎の小さな工務店、大工さんなどは図面は起こすものの、特にどのようなイメージの商品を選ぶか決めておらず、どこかのメーカーのカタログを持っていき、予算はこれくらいだからこの価格帯から選んでくださいと施主任せにしているケースがほとんどでした。
この商品に決める”理由”が必要
カタログ、サンプルと共になぜこの商品を薦めるのか理由があると決まりやすいです。イメージをわかりやすく伝えるため当時外観パースを作成することもありましたが、そこにも”この商品に決める理由”があると喜ばれます。当然決めることは外壁材だけではなく、早く決めてもらえれば決めてもらうほど仕事は早く進むからです。(決断時間もコスト)
図面はすでに出来上がっています。洋風なのか、和風なのか、モダンなのか、洋風の中でも南欧風や北欧風などある程度立面図を見ればわかるため、提案の幅を絞ることは出来ます。一番難しいのはあまり特徴がない家の形。それと和洋折衷でコンセプトが何でもありの家。。これはちょっと残念な家になりますが、田舎ではとても多いんです。
田舎の工務店や大工さんはあまりそこまで提案しないこともあるので、いつも建てるいつものパターンの家の形というのも多いケースです。どのようなイメージの家を建てたいか、そこでどのような暮らし方をしたいのか、より施主とコミュニケーションを図り喜んでもらうために、より相手が納得するような具体的な言葉とイメージを伝える必要がありました。
言葉とイメージを行き来する
そのような仕事柄、色とイメージに関してとても興味があり、色について独学で本を読みあさり、色彩検定も取りました。
そんなとき、カラー&イメージエキスパート養成講座受講生募集のチラシをたまたま見つけ、1年間8回講義で25万円でしたがエイヤーですぐに受講を決めました。当時は宮崎市に住んでおり、家からもとても近くの場所で開催されるそのお店はパーソナルカラー講座やメイク講座などほとんどが女性客であろうお店で、私がいつも働く男臭い仕事の現場とは180度違ういい香りの雰囲気にやられたからかもしれません(笑)
少人数でしたが受講生は私以外皆女性。その講座の先生は東京在住の男性でした。
そこでは言葉(イメージ)と色には強い相関関係があり、このイメージはこの配色、この配色はこのイメージといったような多くの人が想像するものと自分のイメージの違いを知り、表現を磨く訓練をしました。
モダンといえばこの配色、ラグジュアリーといえばこの配色。それだけではなく、この芸能人のイメージはカジュアル系だとか、ナチュラル系だとか色形だけではなく雰囲気も言葉に落とし込む訓練をしました。
あまり喜怒哀楽を表に出さない男の先生だったのですが、「井上さん、それはちょっと違うんじゃないかな」としょっちゅうダメ出しを頂きました。
1年間といえど、8回講座。すぐに色とイメージを言葉に落とし込めるようになるには時間が短く。ただ、そこでわかったことは…。
センスは鍛えられるということ
センスは生まれつきものではなく、どのようなものが一般的に○○であるとされ、どう表現するとどう伝わるか。これは知識であり、知識を増やすことでセンスが磨かれるということ。
くまもんを生み出したアートディレクター水野学さんの本にもあります。
「センスは知識からはじまる」。まさにこの講座で学びました。
この講座から、仕事で「なぜこのデザインの商品を提案するのか」を伝える訓練(アウトプット)を繰り返しました。
それと同時に立ち寄るお店や施設のデザインなど、どこが美しくて、どこがダサくて違和感を感じるのか分析する(インプットの)質も少しばかり上がったように思います。
御手洗のお店づくりにおいてどこかでそれを学ばれたのですか?と聞かれることもありますが、この講座で会得したわけではなく、それをきっかけに日々感性を磨いていったというのは店づくりに活かされているかもしれません。もちろん今も磨こうと常にアンテナを張り、やってみてはやり直す日々です。
まちのデザイン
私のことは棚に上げて申しますが、日本の公共施設や町のデザインなど残念に感じるところが多々あります。予算の関係上、工期の関係上、元からこうだったから等様々な理由があることも確かですが、はっきり言うと「ダサいは罪」。もう少し深堀するならば、何も考えず配置してしまうこと、周りを意識もせずデザインしてしまうこと、それが結果罪になります。
町の景観もそうです。似通っているからこれでいこうなどと安易に決めてしまおうものなら、その周りすらも安っぽくなってしまいます。そのような町に感度の高い、ビジネスセンスを持った若者が帰ってくるでしょうか?ここに居たいと思える人が増えるでしょうか?
呉の市内に響かず、御手洗のまちにグッと来たのはそのような町全全体の”まとまり感”があったから。(残念な部分もあることはありますが)
たった一つの選定と配置が全てを台無しにすることもあれば、全てを活かすこともあります。それは料理でも商品づくり、店づくりでも同じだと思います。
今までの歴史、そして今ある現状がどのようなもので、どういったものを受け取ってもらいたいがために表現するのか、なるべく細かく分析し取捨選択し、決定していくことが重要です。
十把一絡げにしない細かなセンスと選択、判断が必要
今日から御手洗の文化施設も全て3月いっぱいまで休館になりました。
皆がやるから?ここだけ特別にすると理由を応えるのに面倒だから?
うちの宿泊は今回の新型ウイルスで大きな打撃を受けていますが、CM効果により日中の観光客は増えています。なのに。。
御手洗の文化施設はそんなにごった返すこともなく、窓が開きっぱなしで風通しも良く感染の恐れも低い場所も沢山あります。それに加えてまだまだできる予防策もあります。
それを十把一絡げにして、様々なケースを想定もせず「ハイ閉館」「ハイ止め」では完全に思考停止状態です。
今日佐賀県武雄市は市内小中学校の授業再開に関する緊急記者会見を行い3月16日から小中学校の授業再開を発表しました。もちろん移りゆく様々な状況を加味しながらですが、主体的な決断と発表をしています。
今テレビなどのマスメディアが一様に不安を煽り、その揺り戻しが起きつつある中で、広島県内に感染者で出たと言えど、細かな考察と対処法を考えず、まだそれに追従している決定と行動であることが残念でなりません。
センスとバランス感覚がとても大事です。ものごとを十把一絡げぜず必要なことと必要でないことを見極め判断する主体性が必要です。一方的な情報を鵜呑みにする思考停止人間を増やさないために何を伝えていくのか、まちづくりでも、お店づくりでもすべての表現においてとても大切なことだと私は思います。
遠回りしてしまいましたが、センス(感性)は知識と訓練によって磨くことができます。というよりも磨かなくてはいけないと思っています。情報を一元的にとらえず、様々なものの見方、判断ができるようになるために。
だから、私は「商い塾」をはじめました。皆さんにそのことを伝えつつ、私もまだまだセンスを磨くためにアウトプットとインプットを繰り返し経験を積み重ねなくてはいけません。
3月22日は「よーそろ商い塾part3」”デザイン思考”。
私がいつも意識していること、仕事づくりで意識しているポイントをお話したいと思います。
皆さんのご参加お待ちしています。