3つの古民家宿を核としたベンチャー創出事業

皆さん、こんにちは。よーそろの井上明です。

今日は三連休の中日。例年1月2月は観光業でいう閑散期で、今年はコロナウイルスの影響か宿泊が大きく落ち込んでおり、先週からようやっと春の宿泊予約がちらちら入ってき始めています。コロナウイルスも寒さもあっち行ってちょーだい!
そのような中、JR西日本さんが御手洗で撮影したCMをバンバン流して頂いているおかげか今日はGW並みの忙しさ。ありがとうございます!
カフェ若長も200人近いお客さんが来てくださいました。何組かお待ちいただき、諦めて帰られたお客さんも…せっかく来ていただいたのに申し訳ございませんでした。。

今日のタイトル「3つの古民家宿を核としたベンチャー創出事業」について書いていきたいと思います。

この事業で平成29年ひろしまベンチャー育成基金のひろしまベンチャー奨励賞金賞を頂きました。大正時代の洋館、江戸時代の町家を低価格宿、一組限定のラグジュアリーな宿、その中間の価格帯に位置する長期滞在型宿の3つの宿事業を通じて様々な事業の受け皿と波及効果を生み、新しい事業家・ソーシャルベンチャー起業家を排出する”装置”として機能させようというもの。

H29年ひろしまベンチャー奨励賞金賞を受賞

御手洗地区で空き家を改修し2011年に船宿カフェ若長、2013年にギャラリー脇屋、2014年に鍋焼きうどん尾収屋、2015年に物産館&カフェである潮待ち館をつくりました。素晴らしい感性を持った仲間たちと共に小さくとも個性際立つ事業をコツコツとつくってきましたが、やっていく中で様々な課題にぶつかり、同時に加える1アクションで全体を大きく変える可能性も感じる発見と出会いがありました。

平成28年に御手洗の自治会、老人会、女性会の各会長と重伝建を考える会の3役が御手洗魅力アップ事業3年間の最終年として何をやるかと話し合いをしました。私は当時重伝建を考える会の事務局長としてその会議に加わり、少子高齢化と文化継承に対し主体的にアクションを起こすため「空き家データベース化」と「御手洗みらい計画」づくりを提案し、実行していくことになりました。

「空き家データベース化」と「御手洗みらい計画」についてはまた別の機会に書くとして、その「御手洗みらい計画」の中で抽出したキーワード「御手洗ミュージアム構想」について翌年度に呉広域商工会に提案し、よりブラッシュアップをするために価値観のなるべく離れた外国人数人や専門家に来てもらい様々な視点から御手洗の価値を探っていこうという実行委員会を組みました。

ただの外国人ではなく、日本を良く知る外国人であり、価値を拾い上げて伝えることができる外国人ライター3人と御手洗とも以前から関わりのあったドイツ人の大学教授合計4人に加え、建築家やデザイナーなどモノの見方、表現が得意な専門家やDMO、中小機構や行政も交え意見交換や視察研修などにも行きました。

その中で感じたこと、それは宿の必要性と事業としての可能性でした。

「宿事業をやる勝負に出よう!」と私は決めました。

その理由は3つあります。

1つは、御手洗ミュージアム構想実行委員会で再確認した御手洗の一番良さ、それは元々御手洗にある、御手洗で続いているものであり、それらを深く味わうために宿が必要であるということ。目の前の観音崎から昇る美しい朝陽や空気感、静かでなだらかな海の中に響き渡るイソヒヨドリの鳴き声、独特な距離感で触れ合う住民との何気ない会話…その日常こそが非日常であり最高の”観光体験”であるということです。

2つ目は、宿としての事業性。
少ない人数で運営することができ、必ずしも多くの時間を必要としないところ。(お客さんが寝る時間も商品である)問題は初期費用。家賃や不動産取得費用、修繕にかかる費用や保健所の許可、消防の許可を得るための設備投資の費用がとても大きくなります。保健所、消防はしょうがないとして、古民家改修のノウハウ、道具などは今までやってきたものを持っているのでかなり低価格でやれる勝算はありました。また家賃に関しても私たちの今までの活動と思いに共感してくださる所有者さんの協力のおかげで何とか抑えることができる算段もありました。
これからアクションを起こし続けていくために必要な会社としての収益の柱となる事業の可能性を感じました。

3つ目は、宿事業によってお客さんの滞在時間を増やし、今まで仲間とつくってきた事業にもっと触れてもらいたいことと、新たなプレーヤーが新事業を生み出す環境をつくりたかったからです。
雨や災害、ニュースによる心理的冷え込みなどで御手洗への訪問客数は激減します。また平日の観光客は本当に少ない状況。だからこそまずは土日祝日に集中オープンし、続けながら次を考えようとしているのですが週末にそれらマイナス要因が続くと経営にかなり響きます。(それでもやっていける体制を何とかつくってきてはいるのですが)その課題を克服したかった思いもあります。また新鮮な魚料理を提供する料理人(そのとき、新鮮な魚料理を出す店が無くなってしまっていた)や目の前にある瀬戸内海の自然を活かしたアクティビティを提供する人(シーカヤックは数台ある)、BARや朝・夜の施設利用など場を活用する人を誘致したいと考えていました。御手洗でそれぞれが表現する事業を持ちつつ、お互いのノウハウやアイデアを持ち寄り次なる新しい事業を生み出すという好循環を構想していました。

そして3つの空き家に出会いました。

一つは築100年を超える大正時代に建てられた洋館であり元病院、もう一つは江戸時代末期に建てられた元旅館、そしてこちらも大正時代建築100年を超える元染物屋の物件。

1年半の間にほぼ同時進行で改修し3店舗オープンしました。ここでも沢山の難題にぶち当たりながらいくつもの壁を乗り越えていきました。多くの協力者のおかげで。
一つ一つに改修の”すったもんだストーリー”があるので、それもまた一つずつご紹介していけたらと思います。

左から一組限定宿「閑月庵新豊」中央が低価格素泊まり宿「GUESTHOUSE醫」右シェアハウス「港町長屋染初」

今宿事業をスタートして2年目3年目を迎え、それなりの手ごたえを感じています。一方で多くの改善点もやればやるほど見えてきました。
この3年で実際にチャレンジしようとやってきた移住者も数か月で2人帰っていきました。彼らがどうこうではありません。ただ当然厳しさもあります。私たちの至らないところも沢山あります。それもまた私にとってとても大きな経験であり多くの学びをもらいました。

まだまだ成功しているとは言えず、失敗も多く、やるべきことも山のようにありますが、私には”やらない”という選択肢はありません。そう、もう引き下がれないのです(笑)

誰もやったことのない課題に取り組み乗り越えれば、誰もやったことのない景色をみることができます。

私たちの挑戦はこれからです。
よーそろー